タイガーの行方
不倫騒動以来、一度も公の場に姿を現していないタイガーが、AP通信の「2000年代最高アスリート」に選出されました。 「2000年からの10年間で最も輝かしい成績を残したスポーツ選手」に選ばれたのです。本来なら家族で喜ぶ姿が報道されたでしょうに、なんとも残念で す。
10年間の活躍の裏には、並外れた努力があったはずです。
ストイックにトレーニングをして、練習を繰り返し、勝って当たり前というプレッシャーの中の集大成です。
長年積み重ねてきた、そのすべてが水の泡にならないことを願います。優勝64回(PGAツアー56勝)メジャー12勝(2位6回)だけでも驚き!過去に56勝以上した選手は4名しかいません。
それも10年間ではなく、生涯勝利数なのです。なんといっても凄いのが世界ゴルフ選手権(WGC)シリーズで、27戦して14勝を挙げています。世界の トップクラスが照準を合わせる、注目の大会でこの成績です。10年間のPGAツアー主催大会獲得賞金は$81,547,410で、1試合平均4千5百万円 近くも稼いでいることになります。
“タイガー不況”はスポンサー(全12社)にも波及しています。
「ジレット」がCM放送をとりやめ、自粛期間の支援を凍結すると発表したのに続き、14日にはコンサルティング大手「アクセンチュア」が一連の報道を受け 「我が社の広告イメージに適さないと判断した」と6年間に及んだ契約を解除すると発表するなど、有力スポンサーの撤退が相次いでいます。
米飲料「ゲータレード」も関連を否定しながらも、タイガー関連商品の発売中止を決定しています。タイガーの不祥事とは関係ないと思いますが、スポンサーの 1社で、タイガーが視力矯正したことでも知られる医療専門のTLCビジョン社は12月21日、日本の民事再生法に相当する連邦破産法を申請しました。負債 総額は5億ドル(約455億円)とされています。
全米のゴルフショップでも、タイガーの関連グッズが“特価品”に格下げされているようです。パームビーチ・ポスト紙によれば、ナイキ社のTW(タイガー・ ウッズ)ブランドの発注を停止して棚から商品を撤去する店舗が続出し、TWブランドのシャツとシューズが4割引きで販売されているショップもあるそうで す。タイガーを取り巻く環境に大きな変化が訪れているのは間違いありません。
しかし一番事件になりそうな問題が起こっています。タイガーの左ひざの手術からの復帰を手助けしたという、アンソニー・ガレア医師が、違法薬品所持容疑で、カナダで起訴されました。タイガーは鎮痛薬「ビコディン」と睡眠薬「アンビエン」を服用していました。
ビコディンはモルヒネやコカインに似た作用を脳に及ぼし、米国では“代用ドラッグ”として100万−200万人が使用しています。今年6月に急死した米歌 手マイケル・ジャクソンも多量に服用していたとされています、薬の副作用として“男性機能”を高める効果もあるといいます。アンビエンは米国でポピュラー な睡眠薬ですが、睡眠中に車を運転するなどの異常行動があるとFDA(米食品医薬品局)が報告を出しており、こちらには性欲増進という“おまけ”がついて きます。
この2つの薬物の影響でウッズがセックス中毒になったとされていますが、ウッズ自身はリハビリに行くのを拒否しているといいます。左ひざの手術後のリハビ リで、タイガーが違法薬物を使用されたと分かれば、さらに追い込まれることになりますが、ドーピングに関しては絶対潔白あると信じたいですね。
米国ゴルフウィーク誌が、読者に実施中の「タイガー・ウッズの復帰時期予想アンケート」によれば、サンディエゴオープン(1/28-31)1%、アーノル ド・パーマー招待(3/28-28)23%、マスターズ(4/8-11)19%、全米オープン(7/17/20)9%、それ以降6%で、2010年以内の 復帰はないとするは、なんと39%とかなり悲観的になっています
タイガーの無期限のツアー出場自粛の影響は大きく、PGAツアーと2012年までの6年契約を交わしているテレビネットワークのCBSとNBCも対応に追われているようです。
左ひざの手術を受けたタイガーは、2008年全米オープン優勝の後、8ヶ月間トーナメントから離れていました。その間のテレビ視聴率は、タイガー参加時の半分に落ち込みました。そして今、タイガーは自動車事故とスキャンダルが元で、無期限のツアー出場自粛となりました。
テレビネットワークは、確かな視聴率見込みをベースにして宣伝媒体を販売しています。どれだけ広告主が彼等に支払ってくれるかをベースにして、PGAツ アーに支払える金額を決めているはずです。今回の不祥事が与えた、ゴルフ界へのマイナスイメージも含め、「帝王タイガー」抜きの現状は、テレビネットワー クとPGAツアーとのテレビ放映権料交渉にも、大きな影響を与えそうです。
2010年のルール改正で、世界中のツアーで新しいグルーブのアイアン使用が義務づけられました。いまだに反対意見も多く、結論はグルーブルール変更の初期効果が、スコアにどれほどの影響を与えるのかによって判断されていくことになります。
スティーブン・エイムスが11/15日、ディズニーワールドで行われたチルドレンズ・ミラクル・クラシックに優勝した時、2010年ルール適合の54度と 60度のナイキVRウェッジを使っていました。ディズニーワールドは、出場選手達がUグルーブのアイアンを使用できる最後のPGAツアー公式トーナメント で、殆どの選手がUグルーブを使用していたはずです。何人の選手がエイムスと同じようにVグルーブを使用したかは明らかではありませんが、その結果を見る と、Uグルーブを使った選手が必ずしも有利だとは限らないことが証明されたことになります。
同日、オーストラリアンマスターズに優勝したタイガー・ウッズも、同様に新ルール適合の56度と60度のナイキVRウェッジを使用していました。
タイガーは2009年度のPGAツアーシーズンを通して、PWまでのアイアンは既に新グルーブにしていましたし、ダンロップ・フェニックスで、エドアル ド・モリナリとのプレーオフに破れ、優勝を逃したロバート・カールソンも、タイトリストの50度及び56度のボーケイデザイン・スピンミルドC-Cウェッ ジ(2010年ルール適合グルーブ)を使用していました。
欧州賞金王のリー・ウエストウッドは、既に新しいグルーブを調整中であることを明かし「新しいグルーブを試してみたが、正直に言って多少の違いはあっても大差ないだろう」と話しています。
彼の話では「ピンのゴルフクラブはいずれも来年からのルール適合品に非常に近いものだと思う。既にこのウェッジをこれまで3、4ヶ月テストしているが、私 が今年使ってきたグルーブよりも、新しいグルーブの付いた新しいウェッジで、実際によりスピンをかけることが出来た。明らかにラフからのプレーでは多少の 違いが出るだろうし、それが協会の意図するものだろう。それは彼等の考え方だ。私は世界最高のプレーヤーは依然最高のプレーヤーであり続けるだろうと思う し、ショートゲームの達人は、これからもショートゲームの達人だろうと思う」と感想を述べています。
これらの結果だけから見ると、ルール変更の影響が最終的に勝利に及ばないことになります。このルール変更は、プレーヤーの戦略に影響を与えるかもしれませんが、変更が必要だったかどうかは依然不明です。
グルーブを変更するより、ジャック・ニクラウスが提唱していたように、ボールを変えるべきではないでしょうか。スピンを増やすことで、平均ドライバー飛距 離を落とす「ツアー専用ボール」を開発すれば、判りにくいルール改正の繰り返しや、歴史的な素晴らしいコースを改造しなくても良かったはずです。


