バンコクライフ創刊号
新年あけましておめでとうございます。今年もゴルフに関する情報をお伝えしていきたいと思います。「タイガーが交通事故で 重体!」というセンセーショナルなニュースが飛び込んで来たのは2009年11月27日のことでした。自宅近くの消火栓に衝突し愛車を大破させた事故が、 まさかタイガーの運命を狂わす一連の「不倫スキャンダル」の発端になろうとは。あれから1年が経ち、本人、そして同じツアーで戦う選手たちは、一体何を感 じているのでしょうか。
アーニー・エルスは「正直彼はよくやっていると思う。人生で最も辛く厳しい時に、進むべき道を見つけて困難を乗り越えてきたんだから尊敬するよ。今は自信 を少し失っているだけ。メジャーにもきっと勝つ。それだけの資質を持ったゴルファーだからね」と好意的なコメント。世界ナンバーワンを奪い取ったリー・ ウェストウッドは「あの一件で、彼も自分たちと同じように“人間”だったんだ、ということを痛感させられた」と語っています。
ギャラリーや仲間のプロゴルファー、メディアを含めた、周囲のタイガーを見る目や反応といった環境が、それまでの「優等生タイガー」と接するのと違うのは 当たり前で、タイガー自身も敏感に感じていたはずです。自分が犯した罪とはいえ、ゴルフに集中できなかったのは当然で未勝利に終ったのも、いたしかたな かったのではないでしょうか。タイガーは「またサンクスギビング(11月末にある米国の祝日、その夜に事故が起きた)がやって来る。我々は曲がり角を曲が りながら新たなページをめくり、常に前を向いて進まなければならない」と語っています。
タイガーが最近再開したツイッターや、ニューズウィーク誌のインタビューの中で、ファンに向かって伝えたかったこととして「これまで如何にファンが支援し てくれていたかは最大の驚きだった。自分を取り戻すことが立ち直る唯一の方法でした。自分のしたことを認識した時は不幸だったし、してはならないことをし てしまった」と深い反省を語り、このことで何を学んだか?と尋ねられると、「かつての自分ではなかった」と付け加えています。今は幸せか?との質問には、 「そう思う。自分のことをより理解し、これからどうなりたいかもわかった」と答えています。新しく迎えたコーチ、ショーン・フォーリーと共に変えているス イングについては「ほんの断片的な部分(bits and piece)」と説明し、「ミスの修正方法が少し変わった」と付け加えています。
不倫騒動、家族との別離、コーチとの決別、故障、シーズン未勝利と、タイガーにとって2010年はまさに苦難のシーズンでした。「徐々に自分が失っていた バランスを取り戻しつつある。自分のヒーリング過程は完治からほど遠いが、今まで見逃していたことを感じ始めている。自分は勝利がトロフィーではなく笑顔 であること、そして普通の生活が喜びだということを学んでいる」とも語っています。「自分を偽っていた昔より今の自分の方が好き」というタイガーの 2011年シーズンはすぐに始まります。
年末、タイガーはフロリダ州ジュピターアイランドの新居に引っ越しました。2年前、3,500万ドルで購入した廃屋を、1,500万ドルかけてリフォーム したとのことです。新居の庭にはゴルフコースもあり、その広さはタイガーがドライバーを打てるほど広大で、4つのグリーンはすべてバンカーでガードされて おり、「全英オープン」でおなじみのポットバンカーも3つ作られているようです。ゴルファーならこんな家に住んでみたいと思うのは当然ですが、自業自得と はいえ独りでゴルフをするのも、独りで住むのも寂しいですね。現在タイガーの最優先事項は二人の子供達に会うことのようですが、ジュピターアイランドの新 居は子供達とゴルフをするための新居だったのではないでしょうか。インタビューでタイガーは息子と練習用ゴルフボールで遊んだことに触れています。亡父 アールがタイガーにしてくれたように、「毎日、子供達に何かを教えようとしている」と語り、そして「時が来たら過去に起きた真実についても教えようと思っ ている」と付け加えています。「父はいつも”愛は与えられるものだが、信頼と尊敬は、自ら勝ち得るもの”と言っていた」ともコメントしていますが、真に 今、タイガーが自分で勝ち取りたいと望んでいるものなのでしょう。
タイガーの2010年最終戦「シェブロン・ワールドチャレンジ」最終日は、復活をかけて単独首位からのスタートでした。1番・3番共に2m前後のパーパッ トが入らずスコアを落とします。逆に4打差で2位スタートのグレーム・マクドウェルが5番までに3バーディと猛チャージ。13番パー5まではなんとか1打 リードを保っていたのですが、ティショットを左ラフに入れたタイガーは出すだけ、G・マクドウェルは絶好のポジションから右サイドに2オン。タイガーの3 打目はキャリーでグリーンオーバー、そこからのアプローチは傾斜で止まらずまたオーバー、さらにそこから2mオーバーして返しが入らず、ダブルボギーを叩 いてしまいます。
G・マクドウェルは手堅く2パットのバーディで、一気に2打リードと逆転したのです。直後の14番でG・マクドウェルはティショットを右のラフに打ち込み ボギーを叩き、1打差で迎えた17番パー3。タイガーは左5mにナイスオン。G・マクドウェルはグリーンをキャリーでオーバーしてブッシュに打ち込みま す。アンプレヤブルを宣言し、ワンペナを払いグリーン後方の一段上がったティグラウンド横にドロップしましたが、ピンが見えない打ち下ろしの難しいアプ ローチが残りました。しかしそこから2mにナイスオン。タイガーは決めれば絶対有利のパットが入らず、大ピンチだったG・マクドウェルはこれを冷静に決め て、二人が並び勝負は最終18番へ。
タイガーのセカンドは完璧で1mにナイスオンしてド派手なガッツポーズ。17番に続き、またしても追い込まれた状況でマクドウェルは5m左手前にオン。し かしタイガーが見守る中これを決め、タイガーを見ながらガッツポーズを決めました。タイガーも決めてプレーオフに突入したのですが、1ホール目で同じよう なシチュエーションから先にバーディを奪ったG・マクドウェルが、3mを外したタイガーを破り、逆転勝利を手にしたのです。
タイガーの敗因はやはりパットでした。「マスターズ」は最終日5番までで3ボギー、「全米オープン」も6番まで3ボギーとし首位戦線から脱落と、ベストテ ンに入ったメジャーは共に、最終日前半のミスパットが響きました。最終戦も今年一年を象徴するかのような結果で、ここぞという時にパットを決めきれずに負 けたことになります。今回も使用パターは、「全英オープン」や「ライダー・カップ」でも使った「ナイキメソッド003」でした。10年以上使い続けた 「S・キャメロン・ニューポート」からのスイッチは「転がりが良いから」ということですが、パッティングの不調は深刻な状態のように思えます。
2010年のメジャーは、「マスターズ」のF・ミケルソン以外、欧州PGAツアーメンバーが3大会で優勝を飾りました。好調だった欧州勢の急先鋒、「全米 オープン」で初メジャーを飾ったG・マクドウェルが「シェブロン・ワールドチャレンジ」でタイガーを下し、「全米プロ」優勝のマーチン・カイマーと共に、 「欧州ツアー最優秀選手賞」を獲得しました。欧州ツアーの記者、評論家による審査委員の投票の結果、二人に与えられることになったのは、欧州ツアー26年 の歴史でも初めてのことです。
また2010年度「PGAツアー最優秀選手賞」は「FedExカップ」を制し、PGAツアーでも3勝したジム・フューリックに授与されることが、仲間のプ レーヤーによる投票により決定しました。「PGAツアーの新人王」は祖父が日本人のリッキー・ユタカ・ファウラーに決まりました。2011年シーズンでの 「王者タイガー」復活はあるのか?日本人選手の活躍も期待して、コラムを書いていきます。今年もよろしくお願いします。


