パターの科学
パッティングを科学的に解明したのがデーブ・ペルツです。徹底した実験による膨大なデータをまとめた「パッティングの科 学」(ベースボールマガジン社刊。1989年発行)では、パーフィーというロボットをモデルに使い、メカニカルにストロークすることが、カップインの確率 を高めると提唱していました。
ペルツ理論のポイントは目標線上をできる限りスクェアにヘッドを動かすための方法論でした。アドレスで肩のラインを目標線と平行にセットして、両手を肩の 真下に位置させたパッティングロボットに手首を固定した状態で、両腕と両肩で作られる三角形を崩さないようにストロークさせて見せたのです。この純粋な振 り子式打法が、もっとも再現性が高い理想的なパッティングだという理論です。
アドレスで手が肩より内側(体側)に近くセットすると、ヘッドはテークバックとフォローで目標線よりアウトサイドに動きやすく、フェースもクローズ_オープンとなりやすいと警告していました。
ボールの位置については、ストロークの最下点の5センチ前方が理想だと述べています「ボールを打ち出した時のバックスピン量が最少となり、スムーズな転が りが得られるから」というのがその理由で実践したツアープロもかなりいました。しかし高速度カメラが登場してインパクトの正体が解りだしてから、機械的な ストローク理論に変化が見えはじめてきたのです。振り子式のストロークであることに変わりはないのですが、手首を固定したままにするのではなく、ダウンか らインパクトにかけて、ほんの少し手首をリリースするようになってきました。
手首を完全に固定してしまうと、フィーリングが消えてしまう可能性が強いのです。パッティングには微妙な感覚が大切です。そのためにはハンマーで釘を打つように、少し手首を使ったほうがいいという理論が登場したのです。
「特にロングパットでは積極的に手首を使うようにすればストロークが小さくてすむ。手首を固めて長い距離を打とうとすると、どうしても体を揺さぶるようになり、軸がブレやすくなる」というものでした。
しかし「手首をリリースさせていい結果が得られるのは、ある程度のレベルになってから。ビギナーはまず手首を固定した振り子式ストロークを体得したほうが、上手くいくようです」という補足がついていました。
その後クロスハンドグリップが登場しパター理論に多大な影響を与えました。
クロスハンドグリップの最大の利点は(右打ちの場合)左手が右手に覆いかぶさるため右手首の角度が固定しやすく、余計な動きができないことと両肩を水平に構えられることでインパクトでも左肩が上がらず正確にボールの芯をとらえることができるのです。
パターをアドレスするとほとんどのゴルファーはハンドファーストになります。右手が下のノーマルグリップでは左腕の長さが余ってしまい、アドレスで左肩が上がってしまいます。
インパクトではさらに左肩が上がってしまうため、インパクトでは目標方向に対するカベを作ることになり、左腕の動きが詰まるためスムースにヘッドが出しにくくなります。
そのため右手のパンチが入りやすいのです。クロスハンドならハンドファ−ストにセットしても左腕は詰まらずに肩は水平なまま左右どちらの動きに対しても、ストロークが安定し正確なインパクトを作れます。
デーブ・ペルツは、1980年代に3ボールパターを考案し特許を取得しました。ツアーでもD・A・ワイブリングなどが使用し日本のツアーでも活躍しました。
このパターは後でUSGAが「シンプルなデザインでない」という理由で不適合クラブとなりました。現在では、奇抜と思われるデザインのものに関しては、試合で使用される前にメーカーは必ずUSGAに認可を取るようになりました。
2ボールパターを発売するときキャロウェイ社はまず、ボールデザインパターの特許を持つペルツに巨額のライセンス料を支払い2ボールパターのデザイン許諾を得ました。
そして『デーブペルツ2ボールパター』と名付ける予定でしたが、ペルツはこれを断わりました。ペルツにとっても更に名を上げるチャンスのはずでしたが、それだけでも彼は満足だと言うのです。
それは彼が提唱した理論が正しかった事が立証されたからに違いありません。
またペルツは自分の経験から2ボールパターは認可を得ることは出来ないと思っていたようで「それだけキャロウェイが努力して認可を得るに至ったということ」と語っています。
ペルツはストローク中に手首を使うことに否定的ですが、手首の動きを抑えるためには、シャフトは短めでグリップは太めがいいと述べています。またセンター シャフトパターとヒールシャフトパターの、打点と距離の関係などもレポートし、道具の研究も積極的に行っています。クロスハンドグリップで2ボールパター を使っている選手が多いのはペルツ理論の集大成といえる結果ではないでしょうか。
当初2ボールパターは、ヘッドのクラウン(上部)とソールそしてフェース以外の部分をくり抜いた設計を施されたもので、不適合の烙印を押されました。
USGAはヘッド上部にある2ボールデザインは問題とせず、形状に対して不適合であることをアドバイスしたのです。そしてキャロウェイは、ヘッド後部にもブリッヂをかける(つまり中空型)ことで認可を得るに至ったのです。
しかしこうする事でフィーリングとインパクト音が快適になるだけでなく、重心位置を低く深くできるという性能アップというおまけまでついてきたのです。 USGAとR&Aから認可を受けるための設計変更のアドバイスを受け続けたことが、2ボールパター誕生につながったのです。


