全英オープン
宮里藍がエビアンマスターズに優勝してから1年が過ぎましたが、その間にさらに米ツアーで4勝を積み重ね、世界ランキング 1位、米ツアー賞金ランキング1位という頂点を狙えるポジションにいます。1年前の自分と比べ、「自信が違う、勝てる自信というのではなく、自分のこのス タイルで良いんだという自信です。自分の気持ちの中にある芯がぶれていないことが、今の良い成績に繋がっていると思います」。信じてやってきたことが間 違っていなかったことを、結果が証明してくれたわけです。その自信が、さらに宮里の好結果を後押ししているのでしょう。
「2年間の試合結果でランキングが変わるのであれば、より1試合1試合丁寧にやろうという気持ちが強くなりました。2年後の自分の為にも、今の結果で左右されてくるという意識はあります」と、女王の座を死守するための心構えも語っています。
常に「目の前の1打に集中する」ことを目標に掲げる宮里にとっての「集中」とは、ショットに臨む際に自分と約束を交わし、その約束を守ることへの「集中」 なのではないでしょうか。約束を守ることで、ルーティーンの中で描いたイメージ通りに体が反応し、イメージ通りのボールが打てるということになります。自 分との約束とは、練習でやってきたことを信じて、リハーサル通り演じきるということです。ざわつき自分を疑う心、不安や焦りから来る「余計な思考」を シャットアウトするには、目の前にある状況を見極め、球筋をしっかりイメージし、そのためのスイングを最後までやりきるしかありません。自分自身との約束 を守りきれているからこそ「集中+自信=結果」となっているのでしょう。
「全英オープン」で優勝したルイ・オイストハイゼン(南アフリカ)にも「集中」を感じました。最終日を首位で向かえ、スタートからパーを積みかさねたオイ ストハイゼンは、8番パー3で3mのパーパットを外しボギーが先行、そろそろメジャーのプレッシャーがかかる頃で、流れも良くないと見ていましたが、続く 9番でイーグルを奪い2位との差を広げ、後半も12番でバーディを奪い、その後も落ち着いたプレーで2位に7打差、2000年にタイガー・ウッズが記録し た最多差優勝(8打差)に次ぐ圧勝でした。南アフリカ勢が全英で優勝するのは、2002年のアーニー・エルス以来通算8勝目になりました。現在27歳のオ イストハイゼンは、「アーニー・エルス基金」による育成プログラム出身です。3月に欧州ツアーで初勝利を挙げていますが「エルスがいなければ僕はここに来 られなかった全英に勝つことはみんなの夢だった」とインタビューに答えています。これで欧州ツアー今季2勝目のツアー通算6勝目。ワールドカップが行なわ れた、南アフリカ出身の「新星」が、反アパルトヘイトを訴えたネルソン・マンデラの誕生日にメジャー初優勝を「聖地・セントアンドリュース」で果たしたの です。普段から厳しい条件の中でプレーすることを、アーニー・エルスから教わり、自然に身につけていたのではないでしょうか。
日本勢が毎年、全英に大挙して出るわりには、成績が常にパッとしないことは大きな問題です。全英出場に関しては出場枠が多すぎますし、甘すぎるように思い ます。今回も石川・谷口以外は「情けない」結果しか残せませんでした。厳しい条件の中でプレーすることに臆病で、不慣れな日本人プレーヤーがいくら参加し ても、貴重な経験を意味のあるものすることはできません。
韓国勢は20歳のアマチュア、ジョン・ジンが通算4アンダーでフィニッシュし「全英オープン・ローアマ」を獲得しました。また「全米アマチュアパブリック リンクス」でもライオン・キム(キム・ジュンミン)が優勝しています。全米アマチュア選手権、来年のマスターズの出場権も獲得しています。厳しい条件の中 に積極的に出て行く韓国勢から、石川と同世代のスター候補生がまたまた誕生です。
全英でもタイガーのパットは重症でした「4日間で3パットが9回、10回あると優勝することはできません。次の試合までに修正しなければいけません。 ショットが良くなるとパッティングが入らないのは皮肉ですよね・・またショットが暴れるときっとパットを沈めるようになるんでしょう」とまるでアマチュア のようなコメントにはガッカリでした。
タイガーが4日間グリーン上で費やした合計パット数は126ストロークと最悪でした。全米オープンでも、4日間トータル120パットでランク47位でし た。短いパットが1度外れると、入らなくなるという状態がマスターズから続いていますが、1999年以来、11年間使って来た「スコッティキャメロン・ ニューポート2」から、「転がりがいい」という理由で「ナイキ・メソッドパター」に変えていました。3日目もパットに苦しみ記録した35パットは、全プ レーヤーの下から5番目にランクされていました。タイガーの三日目までのパット数合計は99パットで、優勝したオイストハイゼンの88との差は実に11ス トロークでした。最終日はニューポート2に戻していましたが、長年使い慣れたパターを変えなくてはいけないほど、パッティングに自信を失っているのは間違 いありません。
そのタイガーのコーチとして急浮上しているのはショーン・フォーリーです。「最終日に勝てない男」と呼ばれて久しかった「ジャスティン・ローズ」をコーチ して、結果を出しています。昨年のシーズンオフからスイングのマイナーチェンジを行い、PGAツアー参加162試合目の「ザ・メモリアル」で「英国のタイ ガー」と期待され続けた逸材が、やっと優勝を果たしたのです。
J・ローズは最終日をトップで迎えた「トラベラーズ選手権」は崩れてしまいましたが、翌週の「AT&Tナショナル」では逃げ切り、2勝目を挙げています。 また世界ゴルフ選手権の第3戦「WGC ブリヂストン・インビテーショナル」で今期2勝目を挙げた「ハンター・メイハン」や、PGAツアー3勝を挙げている「ショーン・オヘア」もS・フォーリー の指導を受けています。
S・フォーリーは35歳でタイガーとは同年代、拠点もフロリダ州オーランドでタイガーの自宅にも近く、契約先も「ナイキ」と同じです。ショーン・オヘアと タイガーは練習ラウンドを一緒にする仲で「悩める王者タイガー」との急接近は当然のことでしょう。ラップのリズムで気分をリラックスさせ「友達感覚」で楽 しく指導しているようですが、「へこみっぱなしのタイガー」にはうってつけのコーチではないでしょうか。


