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Kankokutei

日本ゴルフ界の将来 最終回

松山英樹は今季国内ツアーのシード権を放棄することを明らかにしました。

世界最大手のマネジメント会社であるIMG社と契約し、

米国内に拠点を探していることですが「米国中心でいきたいので、

国内ツアーのメンバー登録はしませんでした」ということです。

今年も「5試合を達成できる余裕はない」と判断し

、昨年12月末にJGTOに義務を満たせなかったための

制裁金100万円(推定)を支払うとともに、今季シードの放棄を申し出たのです。

「自分の決めたことをやっていきたい」と、

米ツアーに専念して結果を出すための松山なりの回答でした。

 

IMGは石川遼や、テニスの錦織圭も契約しています。

本格参戦1年目の昨季はホテル暮らしで米国内を転戦しましたが、

温暖な気候で、IMGの練習場があるフロリダ州を最有力候補に、

家探しを進めているということです。

 

前回のコラムでも述べましたが、JGTOは昨年3月

複数年シードを取った選手に対し、年間5試合の出場を義務付ける

ルール改正を何の前触れもなく行いました。

主戦場を米国へ移した松山、そして石川の人気をキープしようと

前年までは「0試合」だった出場義務を増やしたのです。

松山がこの「5試合ルール」を初めて耳にした時に

抱いた思いはショッキングなもので「正直に言えば『ああ、もう好きにすれば』

という感じがした」ということでした。

「賞金王」に輝き、米ツアー本格参戦を心に決めていた

13年終盤の心境としては「0試合」でシードを維持できる権利は、

「賞金王」の称号よりもずっと魅力的だったはずです。

 

「『5試合も出られない』というのではなくて、

『おれが取ったはずの資格はどこに行ったの?』と思った。

ゼロ試合でもシードを維持できる資格を取ったのに、

どこに行ったの?って」と、振り返っていますが

出場権にからむツアーのルール改訂には

一定期間の経過措置が設けられるのが一般的でした。

事実、15年から改定される賞金シードは、

新ルール施行の1年以上前に通知があり、

選手たちは「今季の賞金ランク60位以上が来季の第1シード、

61~75位は第2シードになる」という規定のもとで14年シーズンを戦いました。

しかし「5試合ルール」は、開幕前に突然制定され施行された改悪で、

松山が「権利を剥奪された」と感じるのも当然でした。

「ツアー全体として議論があって、5試合というのを確立してやるなら分かる。

でも…そこで、またゼロに戻そうかという話が出ていると聞いた。

もう何をどうしたいのか…よく分からない」と、感想を述べていました。

 

東北福祉大ゴルフ部の阿部監督は

「決められたルールは守るというのが本人の考え。

だから制裁金を支払った上でメンバー登録はしなかった。

そうしたいというので、その通りにさせた」とのことですが

「日本の試合には出たいが、今の自分にはその余裕がない」という言葉通り、

条件を満たせなければ再び懲罰の対象となることを考え、

JGTOからの聴取やメディアからの取材など

周囲の喧騒を避けるための決断だったのでしょう。

JGTOは松山がメンバー登録しなかったことに「残念です」とコメントしていますが、

あまりにも短絡的な決断で、すべてが後手に回った結果です。

これにより全登録メンバーを紹介している2015年のツアーブックから

松山が姿を消す可能性が大きく、JGTOは墓穴を掘ることになりました。

 

松山は「日本ツアーへの嫌気なんかないです。

あるわけない。悪口を言うつもりもない。

当然出たい気持ちはあるんです。

ダンロップフェニックスとか、日本オープンとか

三井住友VISA太平洋マスターズも良いコースだし。

だけど、実際に自分が本気でプレーしたいか、本気でプレーできるかと言うと、

考えて、考えて、どちらかというと『NO』になってしまう時がある」と、

全力で立ち向かえない大きな故障を抱えての転戦を思いだし、

言葉を選んで答えていました。

 

松山は「日本人選手のレベルは低くないと思う。

今年はPGAツアーの選手が日本で多く試合に出ました。

バッバ・ワトソン(三井住友VISA太平洋マスターズ)、

アダム・スコット(日本オープン)、ブラント・スネデカー(ブリヂストンオープン)。

でもその中で、トップ10に入ったのは

ジョーダン・スピース(ダンロップフェニックス3位)だけでしょう。

それを考えたら、日本のレベルは単純に言えば低くない。

その外国人みんなが勝っていたら、

レベルが開いていると言われたって仕方がない。

でも、日本ツアーは彼らがパッと来て、

勝てるレベルではないということじゃないですかね」と、

日本男子選手の世界でのポジションを語っています。

 

しかし「日本人のレベルが低くないというのは、

日本のコースでやった場合の話。アメリカ、イギリスではまた違うと思うんです。

日本の選手がメジャーでアメリカに来て、

みんなが予選を通過して30位以内に入っているかと言われたら、

それもまた『NO』。日本のコースでやっていれば、日本人は強い。

アメリカでやればアメリカで強くなるのは当然だと思う。

もちろん考え方は人それぞれ。けれど、僕はアメリカで勝ちたい、

海外でやっているメジャーで勝ちたい。

だからこっちのゴルフで活躍することが大事だと思った。

それに向けてやってきたし、今もそうしている段階なんです」と、

海外で戦う意義を語っています。

 

同学年の石川に始まった松山世代の近年の活躍は眩しいほどですが、

昨年8月に長野・軽井沢で行われた

「世界アマチュアゴルフチーム選手権」の結果(男子29位)を見ても、

2人よりも若い世代、10代の若年層への強い連鎖にまでは

至っていないのが現状です。

スタート時点からのゴルフ環境の違いも大きいでしょう。

日本では体格がいい子供にはまず野球を始めさせますが、海外では違います。

中国の海南島でゴルフ場の造成をしていた時、

韓国での実績を見込まれ、海南省のゴルフ好きの幹部に

「君のコースの中に施設を作るから体育学校の生徒の中で、

ゴルフに向いている生徒を選抜してほしい」と頼まれたことがあります。

結局その幹部は失脚し実現しませんでしたが、

眼力が強く運動能力に優れた生徒が多く、目移りしたのを覚えています。

良い選手が育つ環境作りは、アジアの方が日本より上なのだと

改めて感じさせられたことを思い出します。

 

寡黙なイメージがあるため意外かもしれませんが、

松山は大の子供好きです。コースでのサインも小さな子を優先し

「励みになるのは子供の声援。自分も子供の頃にテレビを見て、

実際にプロに会って、大きくなった。

いま、そういう子たちがいるというのはすごく嬉しい」と、語っています。

 

日本のゴルフ界を牽引したレジェンドたちに憧れ、夢を描いた松山少年は、

その頃と同じように「松山英樹」に自分の将来を重ねる子供たちが、

たくさん出てくることを望んでいるはずです。

石川も「世界一の舞台で活躍する選手がいないと

子供たちはゴルフに憧れを持たない。

英樹と2人でメジャーのトップ10に入るようじゃないと、

日本の子供たちにインパクトを与えられない」。

またそのためには、もっと多くの日本人選手が

海外挑戦できる環境が必要と語っています。

 

スター不在で人気が低迷している日本男子ツアーですが、

メジャー挑戦を考えると、日本ツアーで頑張ってワールドランクを上げるより、

米ツアーで戦うことに魅力を感じるようになるはずです。

「やれる」という気持ちがわいてくれば、どうしても気持ちが

日本から離れてしまうのは当然です。

 

90年代は、賞金額も試合数も米ツアーとさほど変わりませんでした。

しかし今では試合数の違い(PGAツアー47試合、日本ツアー24試合)、

優勝賞金額も日本の5倍以上(米プレーヤーズ選手権171万ドル=約2億520万円、

日本オープン4,000万円)となると、

米国で夢をつかみたいというのは自然の流れだと思います。

 

日本の男子プロは、世界のフィールドで戦っていかなくてはいけない時代なのです。

競争の激しいステージで下積みを経験して、米ツアー、欧州ツアーに

目を向けていくことが大事だと思います。

「女子ツアーのスポンサーはやりたいが、男子にはそこまでの魅力がない。

グローバルだったらやるけど」というスポンサーが増えています。

日本のトップ企業にしてみれば開催費用など大した額ではありません。

人気選手不在もあって、世界的にビジネスを展開する企業にとって

日本の男子ツアーはニーズに合わなくなったということです。

ジャンボが全盛だった頃のオーラを放つ選手はいません。

青木さんみたいな魅力があるかといえばそれもなく、

見ていてワクワクすることが少なくなっています。

 

ファンやスポンサーに対するホスピタリティーなどは、

PGAツアーに学ばなくてはいけないのに、実行力、行動力、スピードがなく、

問題解決に向けて何を考えているのか、話し合いをしているのか、

努力しているのかが見えてきません。

ツアー自体が選手を軽んじて、リスペクトが感じられないのです。

若い選手に夢を与えられるように、早急に組織改革をすべきです。

シーズン20試合以下になると、世界のツアーから外されることになり、

ワールドランクのポイントが無くなります。

JGTOは本当に気づいているのでしょうか?もう手遅れかもしれません。

 

海外に積極的に進出する選手には、ツアーが中心になって

道を開いてあげるべきです。

そのためには欧州ツアーとの共催の多いアジアンツアーや

ワンアジアツアーとの共催が不可欠です。

アジアを股にかけたツアー規模の拡大しか道はありません。

プロツアーは弱肉強食の世界です。

違った文化の中で経験を積むことでしか生き残れない時代のように思います。

鎖国状態で国内のスポンサーを求めても道は開けません。

アジアとの連携はグローバルなスポンサー獲得に繋がることでしょう、

そうなればアジアをマーケットにしている日本の大手企業も

スポンサーに名を連ねることになります。

石川と松山の二人以外、海外で通用しない現実を、

JGTOは深く受け止めるべきです。

 

通算220回の連載ですが、このコラムで休載とさせていただきます。

スタジオはスクンビット33のホテルロータス向かい側の

「バー絆」の2階に引越しします。

9年以上ご愛読いただいたゴルファーの皆様、

本当にありがとうございました。

これからも皆様のレベルアップのお手伝いができればと願っております。

お近くにお越しの際には是非お立ち寄りください。 Sammy Ohtaka

 



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