王子から王者へ
このコラムも100ホールを迎えることができました、ご愛読いただいている皆様には、心より感謝申し上げます。
6日に最終日が行われたフジサンケイクラッシックでは、1週間前に最終日を単独首位でスタートし、66を出しながら1打差の3位に終わったVanaH杯・ KBCオーガスタでの悔しい敗戦を糧に、石川が雪辱優勝を果たしました。「いいプレーをしたと思ったが、本当に悔しかった。今週は周りを見ず、自分の世界 でプレーしようと思った」と優勝インタビューに答えました。
昨年1月のプロ転向後、コーチの父勝美氏と「2年目の秋に勝負できるように」と立てた目標を見事にクリアして見せたのです。プロゴルファーの練習時間に占 めるドライバーの平均的な練習量は10〜20%ほどですが、石川は50〜60%の比重を置き、1日300本以上を目標にドライバーを徹底的に磨き、「最大 の武器」として戦いました。遠くに正確に飛ばせば、2打目は短いクラブを握りピンポイントで狙えることになり、攻めのバリエーションも大きく広がります。 9番のパー4を例にあげると、フェアウエー中央からの2打目は左手前の池側にピンが立っていました「広い方に打っていくことに徹した。それが優勝できた理 由の1つです」と、あえてピンより右側を狙って、確実にパーセーブするコースマネジメントを選びました。「ピンチがなく、ストレスのないラウンドができま した。ドライバーが安定すればスコアも安定する。ドライバー1本でやってきたおかげ」とワンランク上の受け答えでしたが、前半は1m以内のバーディーパッ トを外すなど思ったようにプレーできていませんでした。それでも逃げ切ったことに器の大きさを感じます。
ロイヤルトロフィー参加時と比べると、体幹が太くしっかりして、首筋の無駄な動きが無くなりスイングも安定してきました。今季最速3勝で獲得賞金額は 9303万4339円。1億円の大台を目前にして、初めて賞金ランク首位に立ちました。史上初の10代賞金王も視野に入ってきましたが「まだまだ練習を積 まないと下手になるし、来週から悪くなるかも知れない」との謙虚なコメントがさらなる進化を予測させます。男子ゴルフ界は、17歳の1強時代に突入したよ うです。2年前の5月。「マンシングウェアオープンKSB」でアマチュアとして史上最年少優勝した後の2試合目が今大会でした。当時15歳、「ハニカミ王 子」と騒がれた遼クンは、わずか2年で「王子」から「王者」のゴルフを身につけたようです。
賞金王になれば、今季、特別招待で出場した最大の目標、マスターズへの慣例的な出場権もゲットできます。今年の経験で「世界トップの凄技」を、身をもって体験してきた石川にとっては、世界では通用しない「日本のプロの技」から学ぶものは無くなってきているのでしょう。
11月26日(木)に開幕する男子ゴルフの国別対抗戦「オメガミッションヒルズワールドカップ」の日本代表選手が、8月28日(金)に発表になりました。 出場するのは、米国ツアーを主戦場とする今田竜二と、今シーズン既に2勝を挙げている藤田寛之でした。世界ランキングの資格で6月の時点で出場が決まって いた今田が、大会規定によりパートナーとして藤田を選んでのコンビ結成となったのですが、今田には、8月17日時点での世界ランキングで100位以内に 入っていた石川遼と藤田のどちらかを選ぶ権利があり、その行方に注目が集まっていたのです。昨年の大会は今田・谷口徹ペアが3位タイに入る大健闘でした。 「昨年以上の順位を目指したい。いま最も安定したプレーヤーと組めることは、本当に心強い」と、今年は藤田とのコンビで世界の頂点に挑みます。出場が叶わ なかった石川は、「ワールドカップのような大きな大会は経験してみたいと思いますが、次の機会に選ばれるようになるか、自分自身の成績で出られるようにな りたい」とコメント。これにより賞金王争いをリードする石川が出場することになる、カシオワールドオープンの関係者は大喜びではないでしょうか。
昨年のちょうど同じ頃、韓国生まれのニュージーランド人、ダニー・リーが全米アマチュア選手権を優勝。タイガー・ウッズが持つ史上最年少優勝記録を破り話 題になっていました。今年も2年連続で韓国生まれの選手、しかもまたしても史上最年少での優勝記録が更新されました。若干17歳11カ月の安秉勲(アン・ ビョンフン)が昨年のダニー・リーの記録を1.5ヶ月上回り、世界最高峰のアマチュアタイトルを手にしました。全米アマチュアの決勝は2007年に全米プ ロ選手権を開催したサザンヒルズ・カントリー・クラブを舞台に行われ、36ホールのマッチプレーで、アンは7&5の大差でクレムソン大学のベン・ マーティンを下したのです。
9月18日に18歳になるアンは、昨年のリーの記録(18歳1ヶ月)を破り、2年連続で韓国生まれのティーネージャーがアマチュアのトップタイトルを獲得したことになります。
アンの両親は、1988年ソウルオリンピックで初めて正式競技となった「卓球」のメダリストなのです。父親の安宰亨(韓国)は男子ダブルスの銅メダル、母親の焦志敏(中国)は女子シングルスで銅、ダブルスで銀メダルを獲得した、韓国では有名な卓球一家です。
アン・ビョンフンは韓国で生まれ育ち、父親が練習場でボールを打っているところを見て、ゴルフを始めたのだそうです。3年半前に米フロリダ州にあるIMG アカデミー(ブランデントン・プレパトリー・アカデミー)に入学。当初は英語が得意ではなかったようですが、完全寮制で少しずつ異国の環境にも慣れ、快挙 を成し遂げました。IMGアカデミーはかなりの「エリート」コースです、将来性も期待されての入学だったのでしょう。
「今思うと、いい決断だったと思います。渡米をしてゴルフをしてみることを勧めてくれた父親に感謝です。これからはもっと大きなタイトルを目指していきま す」と語るアン・ビョンフン。この1勝はアメリカンドリームの入り口です、来年の全米オープン、全英オープン、そしてマスターズにも招待されるはずです。 ちなみに、今年既にメジャーを2戦経験している石川遼の誕生日は9月17日で、アンとは一日違いです。同級生の強力なライバル出現ですね。
今年は韓国出身選手の勢いがすごく、うらやましいことになっていますね。全米プロでタイガー・ウッズを破ったY.E.ヤンや、全米女子オープン選手権で逆 転優勝を飾ったチ・ウンヒもメジャーを獲得しました。全米女子オープンを制した韓国人選手は、パク・セリ、キム・ジュヨン、パク・インビに続きチ・ウンヒ が4人目。また、昨年のパク・インビに続き2年連続の韓国勢の優勝となりました。宮里藍・美香や上田にも頑張って欲しいですね。


