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Kankokutei

2年ぶりの優勝 12月1日

石川が「三井住友VISA太平洋マスターズ」で、2010年の同大会以来となる

2年ぶりのツアー優勝を遂げました。

高校1年生の初優勝とき(2007年マンシングウェアオープンKSBカップ)の時も

石川の目には光るものがありましたが、この日の涙は様々な重圧からようやく解き放たれた

こらえようのない、安堵の涙だったのではないでしょうか。

 

辛く苦しい2年間を振り返り「単に練習していれば自然とゴルフがうまくなるものと

思っていましたけど、勝てないことでそれだけではいけないのかなと思うこともありました、

でもやっぱり、練習をずっと続けてきたから今日勝てたのだと思います」と語りました。

不安な要素も抱えたままで『今日もダメかな』と思う自分がいたことも明かしていますが、

昨年アマタスプリングスで見た石川は、神経をすり減らし、

ピリピリとしたムードを漂わせるほど追い込まれている様でした。

 

最近は「以前は目の前が新鮮なものばかりで好奇心もあった。

おのずとモチベーションも上がっていた。ツアー生活も5年目になって、

もちろんこれは仕事だし、全国を転々とするのにも、いろんなものにも慣れてくる。

以前と同じメンタルは一生持てない。今の自分は以前とは別人だと思っています。

上手い別人か下手な別人かは分かりませんけどね。

あの頃の自分はすごかったなと思うけど、それ以上でもそれ以下でもないです」と、

以前の自分との違いを客観的に見られるようになった様です。

 

単独首位でスタートした最終日は、中盤2位に4打差をつけたものの13番は3パット、

15番で難しいラインを決めバーディと立ち直ったかに思えた16番はバンカーからボギー、

17番も3パットのボギーと「また勝てないのか」と思わせる最悪の流れを演出してしまいました。

最終ホールを前にして、同組の松村道央に1打差に迫られる展開で

課題はパッティングであることが明白に浮かび上がりました。

「ショットが良かっただけに、パッティングのミスがボディブローのように効いてきていました」と

語るように、17番のバーディ・ボギーで松村に傾きかけた流れの中で迎えた

最終18番のロングホールでした。石川と松村のティショットはほぼ同じ位置に運び、

セカンドを先に打った松村はミスショットながらもラッキーなキックもあって2オンに成功。

リードする石川にはレイアップする選択肢もありましたが、

松村が打つより早く5Wをキャディバッグから抜いて、

残り228ヤードの距離から果敢に池越えを狙うことを決めていたようです。

重圧の中、ボールはエッジでバウンドし、ピン手前6mの位置に止まる会心のショットでしたが、

今後のための1打ではなく、勝利を勝ち取るために「決死の覚悟」で放った1打でした。

 

「あれで、優勝が自分に傾いたかなと思いました。そうは言っても松村さんの

イーグルパットが外れたときは、正直ホッとしましたね。

ウイニングパットはわずか10cmでしたけど、しびれました。

勝てなかった2年間があのパットを難しくさせたんだと思います」と、

松村の猛烈な追い上げと、独走しきれなかった自身のふがいなさを語っています。

しかし中盤の独走は「賞金王」を獲った頃の勝負強さを垣間見たラウンドでした。

 

勝てずにいた今シーズンは、最終日にトップを追い上げるポジションでスタートしても、

いきなり1番でボギーを叩いてつまずき、その後バーディを奪って首位に迫っても

のホールでスコアを崩すような「流れの悪さ」で自滅してしまいした。

ところがこの日は、3番で最初のバーディを奪うと10番からの3連続バーディで

2位との差をじりじりと広げて優勝をたぐり寄せたのです。

最終ホールのセカンドで、リスクを顧みずに2オンを狙っていく石川の積極果敢な攻め方は

「強い石川再生」には必要不可欠な姿勢です。

 

「マネージメントの重要性」を掲げ、超がつくほどポジティブシンキングだった石川が、

現状に不安を覚え「このまま続けていけば絶対に良くなる、努力していれば必ず上手くなる」と

繰り返しインタビューで答えても結果が伴わず、石川自身が「自分を励ますための」その言葉を

信じ切れなくなっているようにさえ感じました。ストレートボール一辺倒だった石川が、

フェード・ドロー、高低の打ち分けを身につけ、技術的には間違いなく向上しているにもかかわらず

勝利には結びつかなかったのは、次のステップアップのためにドライバーで攻める恐れ知らずの

攻撃スタイルから、リスクを考え攻め方を選ぶプレースタイルに挑戦したためでした。

「ショットの引き出しが増えたことで、セーフティーかつケガをしないゴルフができるようになってきている。

その分、アイアンショットがピンにまっすぐ向かって、入り出したら止まらないというゴルフはできてない」と

確実性を得た代わりに、ハマった時には「58」の驚異的スコアが出てしまうような

爆発力は影を潜めたのです。感性に頼っていたパッティングもパターを変え、

ストローク軌道を変えて安定性を求めるようになり「深い悩みの時」を経験しています。

 

試行錯誤の2年間で、攻め方も大きく変わりましたが「ここ一番で力を出せる」のが

石川の一番の魅力です。PGAツアーの今季日程がすべて終了し、

石川の来季シード権が確定しました。通算10勝目という節目の優勝ですが、

さらに勝利を重ねて世界ランクを上げて欲しいものです。

「三井住友VISA太平洋マスターズ」の復活Vで同ランクは89位から71位に上昇しており

「意外と一気に上がったな、と思った。その意味ではチャンスですね」と、

語っていましたが、完全復活が期待された「ダンロップフェニックス」の初日は

スタートホールボギーと「悪い時の流れ」で48位と出遅れてしまいました。

2日目は5バーディ・1ボギーで19位まで追い上げたものの、

3日目のスタートホールではまさかの「4パット」で、またしても「悪い時の流れ」を作り、

18番パー5も2打目をドライバーで狙い見事に2オンからの3パットと、

流れに乗れないまま22位タイでの終戦でした。

 

理想を追求しながら、勝負にもこだわるプレースタイルでの2年ぶりの優勝を機に、

石川のゴルフはそろそろ次の段階へとステップアップしようとしています。

3パットが多くショートパットに問題を抱えたままの様ですが、

米国の起伏あるグリーンに対応するための「ジャストタッチ」をトライしているからでした。

強めに打ってラインを消せばまっすぐ決まる1mのパットであっても、

あえてカップまでちょうど届く強さでラインに乗せて沈めるというラインの作り方に

、実戦の大事な1打で「迷い」が生じると、特にショートパットを外すことが多くなります。

 

「ダンロップフェニックス」を制したルーク・ドナルドは、この優勝でタイガーを抜いて

世界ランク2位に返り咲きました。アマチュア時代はウォーカーカップで

イギリス&アイルランドチームを2度の優勝に導く原動力となっていますが

当時の「世界№1アマチュア」に輝いています。

米国ツアー初勝利は2002年の「サザンファームビューロークラシック」ですが

2004年に出場した「WGC ワールドカップ」では、ポール・ケーシーとのペアで

母国を優勝へと導いています。昨年5月の「BMW PGA選手権」を制して

自身初の世界ランキングトップに君臨すると、25試合に出場してトップ10入りは実に19回、

4つのタイトルを手にするなど、前人未踏の「米国・欧州両ツアーの賞金王」に輝いた

欧州を代表するトッププレーヤーです。

 

最初から最後まで安定した強さを見せつけられた大会でしたが、

改めて『世界』との差を感じさせられた一週間でした。

日本人選手と遜色ない体格で、飛距離を武器に戦うプレーヤーではありません。

しかしスコア2日目を終わって13アンダーと4打差をつけ独走態勢に入り、

3日目以降は「安全運転」のゴルフとなりました。

2勝目を挙げたのが初優勝から4年目の「ホンダクラシック」で、

メジャーでは何度も勝利への扉を叩きかけて敗れたL・ドナルドが

大ブレークを果たすきっかけは、一緒に戦ってきたL・ウエストウッドや

M・カイマーが「ワールドランク1位」になった事でしょう。

親しい友人にできるのなら「自分にもチャンスがある」という思いが強かったのでしょう。

「ワールドランク1位」と言う名誉が、未知の世界から現実化したことにより、

モチベーションがさらに上がり「米国・欧州両ツアーの賞金王」にまで登りつめたのです。

 

L・ドナルドや、現在トップランカーの欧州プロゴルファーは、

タイガーの絶頂時代を供に過ごしています。その時のタイガーは

、真正面からぶつかれば、遥か彼方に弾き飛ばされるほど次元が違う強さを誇示していました。

当然世界一になるためではなく、とにかくプロゴルファーとして強くなりたいという気持ちから、

L・ドナルドは自分のゴルフを分析し「飛距離では敵わないなら方向性で勝負」と、

高いフェアウェーキープ率のアドバンテージを活かす「プレースタイル」で戦いに挑んだのです。

しかしフェアウェーをキープしても、距離の長い欧米のコースでのセカンドショットは、

ロングアイアンが必要になる事が多くなってきます。

その結果、グリーンを外す事が増えるのは致し方ないことです。

 

ここで普通の選手なら、ロングアイアンの練習をすることを思いつくのですが、

L・ドナルドは「グリーンを外れるのは仕方ない、そこからいかにパーを取るか」と考え、

ショートゲームの練習に時間を割いたのです。

さらに極めつけはパッティングです。L・ドナルドは3パットしないことで有名ですが、

パッティングランキングも2008年に年間2位、2009年から3年間は年間1位の座を守りました。

ちなみに2012年も3位と、パッティングの安定感は抜群です。

飛距離では飛ぶ選手には50ヤード置いていかれた1打も、

2メートルのパットも同じ「ワンストローク」という自分なりの「強みを活かす術」を手に入れたのです。

 

その練習方法はティーを4本、練習グリーンのカップを中心として周りに40センチ四方に挿します。

そして、3メートル~5メートルくらいの所にボールを置いて、

そのティーに囲まれた四角の中にボールを止める練習をするのです。

カップに入れる練習ではなく、その枠の中にボールを止める

「ジャストタッチの距離感」を合わせる練習を繰り返ししています。

「パッティングは入れる事が一番だけど、入らないことの方が多い」ということで、

外れても「プレッシャーのかかるパーパットを残さないようにする」を

テーマに見据えての練習でしょう。難しいパーパットのストレスを感じずに、

次のホールのプレーへ繋げるための「ジャストタッチ」で、

入れることよりまずは距離感の方が大切だというこだわりが

L・ドナルドを「パッティングの名手」に押し上げてくれたのでしょう。

 

見るからに冷静に、地道にコツコツと積み上げていくタイプですが、

L・ドナルドが世界のトッププレーヤーになれたのは、タイガーが最強を誇っていた時も、

伸びせずに自分なりに自分の道をしっかり歩み続けてきたからだと思います。

勝敗に一喜一憂することなく、自分の出来る事のクオリティーを上げることで

「安定感のある強さ」を手に入れたのです。

そう思うと石川の「ジャストタッチ」へのこだわりも理解できます。

石川は「僕は、本当は不器用なので影で努力して、それでできているよって顔をする。

だから、周りの人にも器用だと思われていたと思います」と

「努力の天才」であることを打ち明けています。

 

15歳で優勝した石川は、プロ転向後も優勝を重ね18歳で「史上最年少賞金王」となり、

日本を背負う「唯一無二」の存在になっていきました。

しかし、石川には、スターになるための準備はできていませんでした。

タイガーも一気にスターへの道を駆け上がりましたが「全米アマチュアゴルフ選手権」で

1994年から3連覇を果たし、満を持してのプロ入りでした。

マネージメントオフィスやメンタルトレーナー等と「チーム」を作り、

スターになるための周到な準備の上に、自信を持ってのプロデビューでした。

しかし石川はジュニア時代に大きな結果を残したわけではありません。

「これならプロの世界でも戦える」というような「自信」につながる準備が無いままのプロデビューでした。

自身を「不器用」と語る石川は、戸惑いの連続の中で努力を重ねたのです。

プロゴルファーとはプレッシャーにさらされる孤独な職業です。

全ては自分の責任で、代わりに打ってくれる人などいないのです。

それだけに自分の努力を信じてくれる「チーム」が必要なのだと思います。

 

このコラムでも何度も述べてきましたが、今必要なのは「努力の天才」を支えてくれる

実力のある名コーチではないでしょうか。

現在活躍する男女プロゴルファーを育て上げたのはほとんどが父親です。

アメリカでスランプに陥った宮里藍も父親の元を離れ、

専属コーチにアドバイスを受けてから成績が上がりました。

契約が噂されるキャロウェイが、アメリカでの生活をサポートしてくれるでしょうが、

米国ツアーを熟知しているコーチとキャディを中心に「チーム石川」を作り直せば

「メジャー初勝利」も遠いことではなさそう思える優勝でした。

 

 



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