物作りの精神
耐震強度偽造問題の追及が続いております、
一番の被害者はそのような建物とは知らずに購入した入居者の方たちです、
企業として建物を立てるのですから利益を追求するのは当然ではありますが、
顧客にうそをついてまで利益を追求するのは許されないこと。
耐震強度偽造=手抜き工事の図式の中で正規の利益以上に儲けたのは誰なのか?
人命を代償にしてまで偽造しなくてはいけなかったのは何故なのか?
この業界にも日本人が当たり前に持っていたはずの「物作りの精神」の欠如が感じられます。
今までのコラムの中で述べてきたことですが、
ゴルフ業界にも建設業界のディベロッパーのような利益追求型のメーカーが多いのも現実です。
パーツメーカーからすると、メーカーの要求するように製造原価を下げるということは
工程を省くなどの手抜きをしなければなかなか単価は下げられません。
商品の品質は当然ダウンしますが、問題は販売するメーカーがユーザーには一切知らせず、
新製品として曖昧な説明でいいところだけを宣伝文句にして販売すること です。
ゴルフクラブの製造過程の手抜き工事が、人命にかかわるようなことはないのでしょうが
耐震強度偽造問題のディベロッパーはゴルフ業界ではクラブメーカーです。
商品を企画してOEMで作った製品を宣伝して販売する役割です。
ひとつ予想をしておきます来年のニューモデルは、
2008年からの高反発規制を見据えたものになるでしょう
「高反発を超える低反発」を宣伝文句に展開するのでしょうが
売れ残りの高反発は間違いなく中古ショップに流れます。
低反発が売れることが予想され、以前では高くて手が出なかったモデルが
安く中古ショップに並びます、来年は中古ショップで気に入った高反発ヘッドを買って、
自分に合ったシャフトにリシャフトするカスタムメイドが流行しそうです。
しかし高反発での飛距離の差はヘッドスピードにもよりますが2〜3ヤード、
それも真芯で捕らえたときの但し書きつきというのが常識です。
恩恵に与れる方は ほんの一握りのゴルファーで、
正しいコピーは「高反発ですがそれは中心だけで、芯に当たらなければちっとも飛びません」
「低反発ですがまぐれ当たりで芯に 当たれば高反発と変わりません」と、なります。
高反発規制を逆手にとって「ルール無視の高反発」
「期間限定の飛距離」などというメーカーも出てくる可能性があります。
ヘッドボリュームが大きくなった段階で、フェースの肉厚が薄くなって
「スプリング効果」が騒がれ「高反発規制」に繋がって来たのですが、
すべてのゴルファーに恩恵のある部分の規制でないことは明らかです。
商品のコストを抑え利益を出す、販売価格を下げて
販売量で利益を上げるというのもどちらも企業としては必要なことでしょう、
しかし利益のために手抜きした商品の情報をユーザーに流さないのはいかがなものでしょう。
日本のアイアン工場から聞いた話ですが「姫路はこのままの単価で販売していたら
みんなダメになる、アジアもアメリカも日本の鍛造アイアンは欲しがっている だから、
もっと値段を下げれば売れるのに」と大手メーカーの担当者から言われたそうです。
たしかに単価を下げれば海外での販売も可能でしょうが、
この仕事 を取ることは手抜き仕事をすることを意味するわけです、
販売努力をせずに売れないと中古ショップに流すメーカーの片棒を担ぐのはご勘弁願います。
日本製であっても手抜き仕事をした製品の品質は中国製と変わらなくなってくる訳で、
「最近の日本製は値段が高い割には、品質が中国製と変わらない」と言われかねません。
アジア市場ではタイトリストプロV1の偽物も出回っているようです、
人気のあるゴルフクラブは当たり前にコピー製品があります、
偽造品工場もはじめは正規の製品を作っていたのだと思いますが、
メーカーの厳しいコストダウンに付き合いきれず、
偽造品生産へと方向転換していったのではないでしょうか、
コストダウンの余波がコピークラブを生み出すとは皮肉なことです。
タイ自由ランド 2006/1/5号に掲載