2013年PGAショー
第60回PGAマーチャンダイズショーが1月24日からフロリダ州オーランドの
オレンジ・カウンティ・コンベンション・センターで開催されました。
ゴルフ関連企業約1000社が出展し、世界75カ国から4万人以上のPGAメンバー、
バイヤーたちが訪れたということです。リーマンショック以降、魅力がないとの理由で
大手クラブメーカーの出展が減り、開催の意義さえ危ぶまれていましたが、
今年はテーラーメイド、タイトリスト、ナイキ、キャロウェイ、ピン、コブラプーマの
大手6社が久々にそろい踏みし、それぞれ大掛かりなブースを出展しました。
大手各社が派手なパフォーマンスを繰り広げ、米国市場は回復基調にある様です。
今年の特徴はゴルフ用品のカラー化で、ヘッド、シャフト、グリップ、ボール、シューズ、グローブなど、
一昔前では思いもよらなかったようなカラーが採用されています。
特にヘッドに関しては、ロフト調整機能が搭載され、固定ロフトという概念が薄くなり、
ヘッド自体にロフト表示が無いモデルも登場しました。従来はヘッドを作る際、
ロフトごとに金型をひとつずつ作る必要があったのですが、
一つの金型で済むことでメーカーとしてはコストダウンにもつながります。
2013年モデルの中でクラブヘッドにロフト表示のないドライバーはテーラーメイド「R1」、
ナイキ「VR・S Covert」、コブラ「Amp・ Cell」、アダムスゴルフ「Super・ S」など、
これらのドライバーはみなヘッドにロフト表示がありません。
テーラーメイドとナイキの新製品ドライバーは、ロフトを8.5度から12.5度まで
調整出来るシステムです。またコブラは8.5度から11.5度、アダムスゴルフは9.5度から11.5度と、
ロフト調整幅が大きいのが特徴です。
タイトリストの「913D2・913D3」は、ロフト、ライの選択肢がある仕上がりになっています。
ヘッドにロフト表示はついていますが、ロフトはプラス1.5度からマイナス0.75度まで
調整できるシステムになっています。
テーラーメイド「 R1」は12種類のライ、ロフト(8から12度まで)が調整可能で、
ヒールとトウに二個所のムーバブルウェイトを配しています。ソールプレートを調整することで、
アドレス時のフェースアングルの見え方を7つの方向に調整することが可能です。
アドレス時のセッティング可能数は168と、調整可能クラブとしては
最多のセッティングが可能ですが複雑さを増しただけで
アマチュアゴルファーはかえって混乱するだけのように思いますが、
実際、アジャスタブルドライバーをお使いのゴルファーは、その機能を生かせずに
そのまま使っている方が大半です。理由を聞くと「違いがわからないから」という答えが多く、
コースレッスンで球筋の傾向から私がレンチで調整し、スタジオで長さやバランスを合わせて
仕上げることが多くなっています。調整機能は、適正ロフトや適正ライ角が判り
「クラブフィッティング」には非常に有効ですが、ご自身での調整は混乱を招くだけになります。
キャロウェイ「RazrFit・Xtreme」ドライバーは、ロフト8.5度、9.5度、10.5度と少な目のロフトには、
やや小さめの440ccのヘッドにし、操作性を向上させて強い弾道が出る様にしています。
またロフト11.5度、13.5度と多めのロフトには大きめの460ccのヘッドを採用し、
打ち易さと球の上がり易さを求めたといいます。ヘッドの重心位置やバルジ、
ロールなどのヘッド設計も大小のヘッドで変えており、少な目のロフトのヘッドはややフェード気味に、
大きめのロフトはドロー傾向の弾道が出るように設計されていますが、
米国市場価格は400ドルになっています。
ナイキ「 VR・S COVERT」は一つのヘッドで15のロフト調整が可能です。
二軸(dual-axis)ホーゼルを採用し、ロフトを8.5度から12.5度まで調整でき、
またそれぞれのロフトで独自に三つのフェースアングルをセット出来ますが
米国市場価格は300ドルになっています。
ピン「 G25」は、それぞれのヘッド(ロフト8.5, 9.5, 10.5, 12度)で
ロフトを±0.5度の調整が出来ます。ディープヘッドと薄いクラウン設計が、
重心位置(CG)を低く、深くしてミスヒットでも弾道安定性を高めるとされていますが
米国市場価格は385ドルです。
アダムス SUPER ・Sは、単一ヘッドで換えられるロフトは9.5度から11.5度、
フェースアングルは9.5度ではオープン、11.5度ではクローズになります。
ソールに配されたヒールからトウにかけての細いスロットが、
ヘッド下部の弾力性を増すとされていますが米国市場価格は300ドルです。
コブラ AMP CELLは4色(オレンジ、レッド、ブルー、シルバー)の中からクラブヘッドの色を選べ、
それぞれのヘッドは6つのロフト(8.5、9.5、9.5ドロー、10.5、10.5ドロー、11.5度)と
3種類のライアングルを選ぶことが出来る様になっています。
アドレスの際、セッティングに関係なく、よりスクエアに見えるように地面への
設置面積を減らす様なソールデザインになっていますが、米国市場価格は300ドルです。
クリーブランドClassic XL Customは12の異なるセッティングが可能となる
アジャスタブルホーゼルを装備したもので、同時に交換可能ウェイトで
スイングウェイトも変えられます。ロフトの選択肢は7.5度、9.0度、10.5度で
シャフトによって異なるようですが米国市場価格は329.99ドルとなっています。
アジャスタブル機能がついていない「classic XL」ドライバーも発売しますが
米国市場小売価格249.99ドルと安価になっています。
すべてのアジャスタブルドライバーは、ロフト、ライ、フェースアングルの調整を
ホーゼル内のパーツを回転することにより変更することが出来ます。
しかしほとんどの場合はロフトの変更はフェースアングルの変更を伴うことが多く、
ロフトを増やせばフェースがよりクローズになり、ロフトを減らすとフェースはオープンになります。
上級者(ハンデ0-12)ゴルファーを調査すると、70%のゴルファーが間違ったロフトを
使っていると報告されています。ほとんどのゴルファーがロフトの少ないモデルを選んでおり、
正しいロフトから1.5度の違いによる飛距離の変化は18ヤードもあることが計算上は分かっています。
しかし「飛ぶ」ことと「曲がらない」ことは相反する要素です。
クラブフィッティングでは長尺にするなどスペックで飛距離性能をだけを高めると、
方向性や正確性には大きなマイナス要因となります。
ヘッドだけでは解決しないのが「ミート率」です。「ミート率」とは、簡単にいえば
「いかに効率よくボールを捉えたかを示す数値」となります。
ヘッドスピードが同じでも、飛距離に差が出ることはよくあります。
「ミート率」=ボール初速÷ヘッドスピードという数式で算出されます。
つまり、「ミート率」とは、ヘッドスピードがボール初速に与えた影響を知るためのデータなのです。
例えば、ヘッドスピードが42m/sで、ボール初速が60m/sなら、
60÷42=1.42ということになり「ミート率=1.42」と算出されます。
「ミート率」は1.4を超えれば、しっかりヘッドスピードを活かしたスイングができ、
効率的に打てたことになります。しかしヘッドスピードが48m/sで
ボール初速が60m/sならば「ミート率」は、60÷48=1.25 となります。
つまり、効率的にボールを打てていないことが数値に表れるのです。
スイングから生まれたパワーをボールに効果的に伝える一番の方法は
クラブフェースの芯でしっかり「インパクト」することに他なりません。
女子プロゴルファーが、物凄いヘッドスピードを持つ一般ゴルファーより
飛ばすことができるのは、彼女たちの「ミート率」が極めて高いからです。
再現性の高いスイングを身につけることも重要ですが、クラブを単体としてみた場合、
その組み方が「ミート率」に大きな影響を与えます。
長く組むことで飛距離性能が上がると信じている大手メーカーは、
すべてのクラブを長尺化しています。以前は長尺志向ではなかった
テーラーメイドもロケットボールからは、ドライバーだけでなくFWまでとても長い組み方になりました。
今までテーラーメイドを愛用して、ロケットボールのニューモデルに買い替えた途端
「当たると飛ぶけど、なかなか当たらない」というお客様が増えています。
クラブが長くなればなるほど必然的に「ミート率」は落ちるのです。
セッティングの流れの中で、長い3番ウッドや3番アイアンが難しく感じるのは
「ミート率」が落ちるため、「ミスショット」の確率が上がるからです。
米国市場価格を見ると300ドル前後と、販売至上主義のための「価格破壊」は顕著です。
中国やタイでパーツとして作られるコスト、組み立てに必要なコスト、
船積みされ店頭に並ぶまでの流通コスト、会社の経費と広告宣伝費、
一番重要な利益まで考えるとパーツの原価は明らかです。
つまり300ドルで販売されるクラブのシャフト原価は「知れたもの」ということになります。
プロゴルファーは4万円以上のアフターマーケット用のシャフトを使いますが、
メーカーは大量に仕入れることでその高価なシャフトと同じ仕上がりのペイントで、
安いシャフトをそのシャフトメーカーに要求することになります。
測定しても、グリップを抜いてシャフトに貼ってあるシールを見るとはっきり分かりますが
当然中身はアフターマーケット用シャフトとは別物ということになります。
「理論武装」の新製品ですが、調整の仕方はさらに難しくなった様です。
アジャスタブルドライバーのフィッティングはサミーにお任せ下さい。